やまはる

honsuki

最初に見せたい相手

それを見つけたのは、アレキサンドリア西部にある古いギーベの館だった。 領地再編に伴う記録の確認と、長年使われていない書庫の整理。その指揮を執るため、フェルディナンドはユストクスと共に館を訪れていた。 書庫に収められているのは、古い収支報告や...
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隠しきれないもの

ユストクスは、フェルディナンドの表情を読むことにかけては、誰にも負けない自信がある。 眉間に刻まれる皺の深さ。 視線を向ける角度。 指先が机を叩く間隔。 他者には同じ無表情に見えても、長年仕えてきたユストクスには、機嫌の良し悪しも疲労の程度...
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理由にならない

領主会議を終えてアレキサンドリアへ戻ったフェルディナンドを待っていたのは、執務机に積み上げられた報告書だった。 不在はわずか数日である。それにもかかわらず、確認を要する案件は予想以上に増えている。 フェルディナンドは外套をセルギウスへ預け、...
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一日一つの望み

それは、朝食の席で突然始まった。「フェルディナンド様。今日から、フェルディナンド様の望みを一日一つ伺うことにします」 フェルディナンドは、茶器へ伸ばしかけた手を止めた。 向かいに座るローゼマインは、何やら決意に満ちた顔をしている。傍らに控え...
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アウブ命令による休養

異変に最初に気づいたのは、ローゼマインだった。 朝の執務室で、フェルディナンドが同じ報告書を二度読み返している。 それだけならば、記載内容に不備がある可能性も考えられる。だが、報告書の端を指で二度叩き、眉間に皺を寄せてから、再び最初の行へ視...
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帰る場所

アレキサンドリア城へ帰還したのは、予定より一刻ほど遅い時間だった。 収穫量の確認を兼ねた直轄地の視察は、大きな問題こそなかったものの、予想以上に報告が多かった。同行した文官達は疲労を隠しきれず、騎士達も早く持ち場を離れたそうにしている。 フ...
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同じ場所で目覚める

ぱらり、と紙をめくる音がする。フェルディナンドは手元の報告書から目を上げた。寝台の反対側では、ローゼマインが枕を背にして本を読んでいる。就寝のために髪を下ろし、薄い夜着の上から肩掛けを羽織った姿は、日中よりずいぶん幼く見えた。視線に気づいた...
ryumiko

月影に染まる、あなただけの特等席

龍宮の夜は、どこか現実離れしている。水面に映る月がゆらめくたび、まるで世界そのものが呼吸しているようだった。「こんなところにいたのか、巫女さん」低く、よく通る声。振り向く前に分かる。「……政宗さん」「名前を呼ばれて、嬉しそうな顔するじゃねえ...